常念山脈(長野) 燕岳(2763.0m) 2023年5月13日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 1:53 第一駐車場−−2:03 中房温泉−−4:15 合戦小屋−−4:43 合戦ノ頭−−5:19 燕山荘−−5:43 燕岳 6:01−−6:19 燕山荘−−6:41 合戦ノ頭−−6:47 合戦小屋−−7:58 中房温泉−−8:09 第一駐車場

場所長野県安曇野市/大町市
年月日2023年5月13日 日帰り
天候曇 西寄りの非常に冷たい風
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場有明荘付近の3箇所に登山者用駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
冬装備10本爪アイゼン(オーバースペック。軽アイゼンで十分)、軽ピッケル(使用せず)
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント土曜はお昼頃から雨との予報でその前に登頂、下山すべく燕岳に向かった。こんな天気予報だが帰り道に20人くらいとすれ違った。残雪は合戦小屋付近から連続するようになり、登りは合戦小屋を過ぎて少ししてからアイゼンを装着し、下りは合戦小屋を少し下って雪が切れた地点でアイゼンを脱いだ。この日は気温が低く-3℃程度で、雪はガチガチに締まって防水効果が切れた登山靴にスパッツを着用せずとも濡れることは無かったが寒かった! 空気の透明度はイマイチで遠くの山は見えなかったが周囲の北アルプスの山々はばっちりと見えていた


燕山荘付近から見た燕岳。山荘から山頂まで残雪は少なくアイゼン不要だった


第一駐車場の入は7割程度 中房温泉登山口
松本市街地の夜景 標高2080m付近の僅かな残雪
標高2200m付近の残雪。まだ長続きしない 目印があるが雪解けが進んで役割終了
合戦小屋。既に営業を開始しているようだ 合戦小屋を過ぎてからアイゼン装着
合戦ノ頭から見た稜線。しばし残雪を歩く 日の出
丁寧にもフィックスロープあり 一時的に無雪地帯を歩く
再び雪に乗る。トラバース箇所は雪切されていた ここでアイゼンを脱げとの標識
冬道だが夏道並みのグレード 冬道は燕山荘裏手に出る
燕山荘裏手から見た常念山脈南部
燕山荘 テント場はまだ全部雪の上
燕山荘から見た燕岳。雪は無さそう おなじみのイルカ岩
ここだけ残雪があるがアイゼン不要 メガネ岩
燕岳山頂 燕岳から見た燕山荘
燕岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
燕岳から見た立山、剱岳、後立山
燕岳から見た常念岳 燕岳から見た大天井岳
燕岳から見た穂高連峰 燕岳から見た槍ヶ岳
燕岳から見た笠ヶ岳 燕岳から見た硫黄岳と硫黄尾根
燕岳から見た針ノ木岳 燕岳から見た鹿島槍、爺ヶ岳
燕岳から見た浅間山 下山開始
燕山荘再び 冬道を下る。しばらくアイゼン不要
念のためここでアイゼン装着 標高2540m付近
合戦ノ頭 尻セードするなと書かれている
合戦小屋
合戦小屋入口。アイゼンのまま入ってOKの看板あり 合戦小屋から少しの間は雪あり
雪が消えてアイゼンを脱ぐ 残雪期用案内標識
イワナシ。たくさん見られた ミツバオウレンではなくバイカオウレン。花弁がやや幅広
バイカオウレンの葉は五つ葉 最も下の残雪は標高2000m付近
マイヅルソウの葉は多数見られた オオカメノキ
今年初のエンレイソウ。葉がかなり小さい 登りで頭を打った巨大倒木
中房温泉登山口 スミレ類。タチツボスミレかぁな
花の色は白っぽく微小サイズ。ニョイスミレか? モミジイチゴっぽい
スミレ類。葉が特徴的・・・と思ったらマイヅルソウの葉であった 今年初のマイヅルソウ
タネツケバナだと思う 葉は全て三つ葉なのでキジムシロではなくミツバツチグリ
第一駐車場到着。まだ空きあり


 最近は天気の変化の周期が悪く今週に悪天続きだが、今週末もまた雨予報。ただし長野については雨はお昼くらいからの予報で、複数の予報を確認した結果でも早朝なら雨は無くまだ風も弱い予報であった。ただし低気圧が接近して南風が入って気温が上がると思ったら標高3000m付近での気温は-3℃前後と予想外に低い。この気温ならば降られても雪は確実であり雨よりはずっとマシだが、下界の最高気温は常に+20℃を上回るようになっており体がその温度に慣れてしまっているので、0℃以下はかなり寒く感じそうだ。

 行先をどこにするかであるが、無雪期の週末は大混雑する燕岳に決定。既に燕山荘の営業は始まっていてルートは整備されている。昨年の経験からしてそもそも合戦尾根は残雪は多くなく安全性は高く、針ノ木岳と違って気軽に登れる。

 金曜夜の早い時刻に第一駐車場に到着。駐車場の入は5割程度だが、これはほとんどの車が燕山荘宿泊者のものであろうから空きが多いのは仕方なかろう。それにまだ残雪期であり明日の下り坂の天気予報はさらに入山者は減る要因である。おかげで夜中の駐車場の動きは少なく静かに過ごせた。

 夜中1時過ぎに起床して空を見上げると幸いにして星が出ていた。まだ天気の崩れはないらしくこれなら下山まで持ちそうだ。飯を食って午前2時前に出発。夏山シーズンならこの時刻に出発する登山者は他にもいるが残雪期では皆無だ。残雪期の装備は軽量の10本爪アイゼンに軽ピッケル。どちらも過剰装備とも思えるが大した重さではないので念には念を入れておく。

 中房温泉登山口の登山指導所は前を通過すると夜中でも赤外線を感知してライトが点灯した。さすがにLEDライトよりもずっと明るい。登山道に入ってすぐに急な登りが始まり体が温まって全ての防寒装備を脱いで半袖に腕カバー、ついでに手袋も脱いで素手になり毛糸の帽子のみになり、しばらくはこの状態で登っていく。予想通り登山道にはなかなか雪は現れず、僅かな残雪の欠片が登場したのは標高2000m付近。先週の爺ヶ岳南尾根よりもずっと残雪は少ない。雪がそれなりに現れ出すのは標高2200m付近からであるがそれでも長続きはせず断続的でアイゼンは不要であった。

 昨年の5月中旬は合戦小屋手前から雪が増えて夏道が埋もれてアイゼンが欲しいと思える状況であったが、今年は合戦小屋に達するまで雪があっても夏道は出た状態でまだアイゼンは不要だった。合戦小屋は既に営業が始まっているようで正面側は雪囲いが解かれて建物内部にはテーブルが並んでおり、入口にはアイゼンのまま入ってOKとの看板が出ていた。

 合戦小屋を通過するとぐっと雪が増えて傾斜も増して滑りやすくなったのでアイゼンを装着。予報通り気温は低くて雪は固く締まってキックステップが利かない状態である。今日履いている登山靴は劣化が進んで靴底はすり減っているし防水性能はゼロの状態で通常なら残雪期には使えない代物であるが、今日は雪が溶ける心配が無いのでこれでも大丈夫であった。ただし靴底がツルツルなのでアイゼンが無いと良く滑り、下りでは合戦小屋の先までアイゼンのお世話になった。アイゼン装着と共に防寒装備も装着。登山口よりもずっと気温が下がって非常に冷たい西寄りの風が吹きつけるようになり、半袖では寒すぎる。長袖+ウィンドブレーカを着用してフリースの手袋、頭は毛糸の帽子からバラクラバ+毛糸の帽子に変更。バラクラバだけでは風が通って耳が冷えるので毛糸の帽子との併用が効果的だ。

 アイゼンを装着すればもう心配はない。傾斜がこれまでよりあると言ってもピッケルを出すような傾斜ではないので軽ピッケルはザックに付けたままで、今回は出番は無かった。三角点のある合戦ノ頭を通過すれば傾斜が緩んで燕岳山頂が見えるようになる。ここからだと残雪の多い東斜面が見えるので雪が多いように見えるが、登山道があるのはここから見えない稜線直上なので実際には残雪は少ない。ただし、燕山荘までは登山道は尾根直上だけでなく東直下を巻いている区間が結構あり、そのような場所は雪が付いていた。傾斜がそこそこ急な場所は雪切されたりフィックスロープが張られたりと、小屋が営業していると至れり尽くせりだ。

 燕山荘が近付くと雪に埋もれた夏道から尾根直上の冬道に移行し、この先は残雪はほとんど無いのでここでアイゼンを脱ぐように看板が出ている。冬道は夏道同様の濃さであり体に触れるハイマツはほとんど無い。ハイマツの中から雷鳥の鳴き声がしたが姿は見えなかった。残念。

 最後の急登で燕山荘の裏手に出る。小屋周囲はほぼ雪は無く地面が出ていて大天井岳へ通じる稜線にもほとんど雪は見られなかった。ここで冷たい西寄りの風が強くなりフリースの手袋の上にテムレスを装着。防寒ではないテムレスなので断熱性は無いが防水なので風をブロックできるので効果がある。

 小屋の西側を回って燕山荘の正面に出るが人の姿が無くひっそりとしていた。テント場はまだ全面が残雪に覆われたままで全てのテントが雪の上に設営されていた。テント周囲にも人の姿は無かった。燕岳山頂や山頂方面の登山道にも人の姿は見えず、まるで小屋が営業していないかのような静けさであった。小屋から見る燕岳山頂までの稜線にはほとんど雪は見られず、この後もアイゼンは不要らしい。

 花崗岩が風化した砂礫の登山道を緩やかに下っていく途中で名物「イルカ岩」が登場するので写真撮影。森林限界を越えて西寄りの風をブロックする物が無いので寒いこと! 天気は薄曇りだがまだ日が低い時間帯なので日光の温かさは全く感じなかった。

 誰ともすれ違うことなく無人の燕岳山頂に到着。いくら残雪期とは言え週末のこの時刻に山頂が無人というのは珍しい。なお、休憩が終わって下山開始するまでずっと無人のままだった。天気は高曇りで空気の透明度はイマイチで八ヶ岳、南アルプス、富士山は見えず、志賀高原の山々が微か見えるか見えないかの況なので奥日光の山々は全く見えなかった。でも近場である北アルプスの山々は南から西、北にかけてずらりと並んでいた。今年は残雪は少なく北隣の餓鬼岳は真っ黒で、硫黄尾根の硫黄岳も山頂付近だけ雪が付いており湯俣から登るとほとんど藪漕ぎだろう。大天井岳北斜面も雪が付いているのは半分くらいであった。針ノ木岳は南斜面を見ているので全く雪が無いように見えるがルートのある北斜面はまだ全面が残雪だろう。カメラでズームすると稜線上の雪壁が見えたが、あれは今月いっぱい残っているかな。

 岩陰で風を避けながら短時間の休憩。気温が低いので汗はほぼかかなかったので喉も乾かず、パンを齧って少しだけ水を飲んだ。山頂で一通りの写真撮影を終えて下山開始したが、燕山荘近くまで登り返してやっと本日初のハイカー(小屋宿泊者)とすれ違った。小屋に到着するとこれから下山すると思われるハイカーが3人、出発準備中だった。テント組はこれから撤収作業の様であった。下るだけなら急ぐ必要はないからなぁ。

 帰りは花を探しながらであるが、当然ながら残雪のある合戦小屋より上部では花は無いので探さずに歩き、合戦小屋を通過して雪が途切れてから登山道脇をキョロキョロしながら歩く。最初に発見したのはイワナシで、あちこちで花を付けていたが地面に張り付く高さしか無く花も小さいので一般登山者は気付かないだろう。普通は雪解け直後の場所にはショウジョウバカマが咲くのだが、今回は全く見かけなかった。昨年の自分の記録を見たらショウジョウバカマを見ているので存在しないわけではないようで、数が少なくて見落としたと思われる。

 さらに下がるとミツバオウレンと思われる花が登場。しかし昨年の経験で似た花としてバイカオウレンがあることを知ったので今年は葉を観察。名前の通りミツバオウレンの葉は三つ葉であるが、ここに咲いているのは全て五つ葉でありバイカオウレンと同定。帰宅後にネットでミツバオウレンとバイカオウレンの違いを確認したところ、葉の形状だけでなく花の形状にも若干の違いがあることが判明。花弁の幅はミツバオウレンの方が細いのだ。撮影した写真で確認すると、確かに今回撮影したものは花弁が幅広で梅の花により似ていると言えた。これで両者を間違うことはないだろう。ちなみのどちらも樹林帯に咲いているので似たような場所にいると思われ、混在している場合もありそうだ。ちなみに今回見たのは全てバイカオウレンでミツバオウレンは皆無だった。

 さらに下るとマイヅルソウの葉っぱがたくさん見られたがまだ花は一つも咲いていなかった。マイヅルソウの花が咲いていたのは中房温泉登山口を通過して駐車場近くの車道脇であった。草ではなく木であるがオオカメノキの花も発見。さらに下って中房温泉近くまで来たら今年初のエンレイソウを発見。ただしいつも見るよりも葉が小さい。でも花は間違いなくエンレイソウ。このくらいの個体差はあるのだろう。

 中房温泉登山口に到着すると2人組がこれから登り始めるところだった。そういえば下りですれ違った登りの登山者数は20人程度だっただろうか。これから雨が降る予報にしては多いと言えよう。明らかに泊まり装備の登山者もいたが小屋泊なら雨でも問題ないか。でも予報では明日日中も雨予報であり、稜線に出てから明日の下山までずっと雨の確率が高いだろう。

 最後の車道歩きが最も花が咲いていた。一番多く見られたのが紫色のスミレで長野県中部から北部で良く見る種類だが、私には細かな種類は同定できない。でも可能性としてはタチツボスミレが最有力だろう。白い小さなスミレも種類は分からないがニョイスミレの可能性が。紫色のスミレと比較して花のサイズは1/3以下でありぱっと見ではスミレと分からないほど小さい。

 黄色い花で三つ葉のミヤマキンバイ似の花は飯縄山でも見かけてキジムシロにしては葉の数が全て三つ葉でおかしいと書いたものと同一で、その後のネット検索でミツバツチグリと判明。これは名前のとおり葉っぱは全て三つ葉である。なお、キジムシロの葉は3〜9葉である。花の形は両者で差が無いように思えるが大きさはキジムシロの方が小さくてミツバツチグリの半分程度とのこと。でも正直なところ並んでいないとサイズの差は分からない。これからは見かけたらもっと良く観察してみよう。

 やや背が高い白い小さな葉はタネツケバナ。これは以前から北アルプスの稜線や登山道で見かけていたが、なかなか種類が特定できなかったのが昨年秋に判明したもの(ミヤマタネツケバナ)。ここは標高が低いのでミヤマが付かないタネツケバナであろう、と思いつつもネットで調べると、タネツケバナはスミレほどではないが細かな種類は20種類近くあり、これらを正確に判別するのは至難の業だと分かった(タネツケバナの分類はここが一番わかりやすい)。今回見たものは写真判定によりオオバタネツケバナ(第一候補)かオオケタネツケバナ(第二候補)と思われる。正確に見分けるには葉と茎の写真が必要だと分かった。次回からは気を付けよう。なお、水気が多いところで見かけるコンロンソウがタネツケバナの仲間だと初めて知った。言われてみれば花の形はよく似ているなぁ。

 最近はAI技術の発展で画像による検索の精度が大幅に向上している。先日に初めて見る花の写真で画像検索をかけたら1発で正解が出たが、今回の花の確認でもグーグルの画像検索を使ったが精度は非常に高くて驚かされる。1年前は全く使い物にならなかったのが嘘のようだ。ただしスミレの細かな種類までは判別できないのは仕方ないだろう。これまでは知らない花をネットで調べるのは手間も時間も非常にかかる割に判別できないことも多かったが、画像検索は非常に楽でありお勧めである。もちろん判別精度は写真の質に左右されるので、撮影の際は花のズーム写真は1枚は撮影しておきたい。そして正確な種の判別には葉と茎の写真もお忘れなく。

 第一駐車場に到着。まだ朝8時なのでこれから出発する人の姿もあった。でもこれからだと山荘到着時にはガスがかかって雨が降っているかもしれない。駐車場の入りは8〜9割程度で空きが目立ち、おそらく第二、第三駐車場はがら空きだろう。車に乗り込んで県道を下って行ってもすれ違う車は数台であった。

 

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